2014年5月25日日曜日

お勧め本『ケースワークの原則』著:F・P・バイスティック、訳:尾崎新・福田俊子・原田和幸

言わずと知れた、ソーシャルワーカーにとってのバイブルです。まだきちんと読んだことがないという人がいるかもしれないと思い、改めてお勧め書籍として紹介させていただきます。
バイスティック氏は、援助関係を「援助関係とは、ケースワーカーとクライエントとの間で生まれる態度と情緒による力動的な相互作用である」と本の中で定義しています。定義にあるとおり、援助関係は言葉や行動ではなく、態度と情緒によるものです。そのため、様態として見極めることは以外と難しいと思います。

今でも医療、福祉の現場では、援助関係が成立しない時、その原因をクライエントのわがまま等、クライエントの責任にしてしまったり、相性の問題として片付けてしまうことがよくあります。援助関係について語る人がいたとしても、関係ができている、関係ができてない、という大雑把な二元論で語るだけだったりします。


バイスティック氏は、この様態として見極めることが難しく、評価しづらい援助関係という概念と、援助関係を構成する7つの要素を世の中に広めました。


この本を再読し、援助関係という概念を自分の中でもう一度再構築していかなければならないのではないかと思いました。援助関係は目で見極めることが難しいため、第三者に検証してもらうことは難しく、その機会もほとんどなかったりします。そのため、現場で何となく仕事をしているだけだと、その重要性を経験とともに軽視するようになり、いつしか忘れてしまっているという結果にもなりかねません。心当たりがある方も少なくないのではないでしょうか。


「援助関係とは、ケースワーカーとクライエントの間で生まれる態度と情緒による力動的な相互作用である。」この定義を肝に命じておきたいと思います。

2014年5月13日火曜日

お勧め本『エコロジカルソーシャルワーク‐カレル・ジャーメイン名論文集』著:カレル・ジャーメイン他、編訳・著:小島蓉子

「生活モデル」という概念を世に広めたカレル・ジャーメイン氏が書かれた論文集です。訳者の小島氏が「生活モデル」の考え方を日本に紹介するべく、ジャーメイン氏の有名な論文を集めて翻訳・出版されました。初版が1992年と結構古く、内容はやや抽象的ですが、ソーシャルワークの機能を色々な概念を用いて見事に説明しています。

現場で何年か働いてから読むと、「そうだよ。確かにそうだよ。」とうなずくことが多く、現場実践の基礎として理論を学ぶことがいかに大切かということを実感できます。他の職種の方から、「ソーシャルワークって何?あなた達のやっていることってよくわからないね。」などと言われた時、この本を読んでいると即座に説明できると思います。「私には理論なんか必要ないです。」と思っている方にぜひ読んでいただきたいです。


ちなみに、ジャーメイン氏は1995年に亡くなっていますが、氏の代表的理論書、「The Life Model of Social Work Practice」は第3版まで出版されています。ただ、第3版は、まだ日本語に訳されていません。私は、洋書を読みこなすのはちょっと厳しいので、英語の得意な方、ぜひ訳して出版して下さい。よろしくお願いいたします。